ぶんか

【ドラマ・シナリオ】木皿泉とQ10で心を揺さぶられる!

ドラマ好きですか? たらふく家では良くドラマを見ます。去年も毎週「鎌倉殿の13人」をワーワーいいながら観ていました。三谷幸喜さんのシナリオ、すごいですよね。ドラマのデキはシナリオ次第だなあ、と改めて思いました。

そこで今回は、わたしの好きなシナリオ作家さんの紹介。なのです。

木皿泉というシナリオ作家がいますよ~

三谷幸喜さんとは、まったく違うテイストのシナリオ作家に、木皿泉さんがいます。
夫婦で共同執筆をなさっています。

「居てよし!」のセリフが印象的な「すいか」は、2003年放送の約20年前のドラマですが、いまでも多くの熱心なファンがいる木皿さんの代表作。いろいろ悩みをもつ登場人物たちが、自分の人生を肯定してもらうことで勇気づけられ、前に進んでいけるというドラマで、観ていて救われる人が多いのだと思います。

「Q10(キュート)」という2010年放送のドラマがあります。これも木皿さんのシナリオで、佐藤健さんと前田敦子さんが主演。高校生を演じています。とはいっても、前田さんはロボットのQ10役なのですが……。

生きづらさや、恋! そんな悩みを抱えた高校生たちがいます。彼ら彼女らの真っただ中に放り込まれるQ10というロボット。その超まっすぐな性格に高校生たちは影響を受けます。そして、いろんな人の助けを借りながら、前進するきっかけをつかんでいきます

取り巻く大人たちだって、いろいろ悩んで生きているわけで、これまた、高校生やQ10との交流を通じて、結果的に救われていきます。

そんな「Q10」の印象的なシーン、セリフを、第一話からほんの少し紹介しましょう。

Q10のスイッチ、平太のスイッチ

佐藤健さんは高校生の男の子、平太を演じています。
平太は女の子のロボット(前田敦子)と出会うわけですが、最初、ロボットは名前もなく、まったくの停止状態です。

平太は、ぽかっと空いたロボットの口からのぞく白い奥歯に魅了されます。その歯を押したくて押したくてたまらなくなります。そして躊躇しながらも結局、指を入れて歯にさわってしまいます。この辺の感覚が独特。でも高校生ならあるかも、と思わせます。

「ファン」と音がなります。突然、女の子ロボットは動き始め、10秒で名前をつけろと平太に迫ります。足の裏に刻まれた「Q10」という文字を見て、とっさに平太は「キュート」といってしまいます。「ワタシのナマエはキュートです」、平太が名付け親になってしまいました。

Q10 は平太の指をつかんで、自分の奥歯に当てます。ファンと音がします。
「ラの音だ」「フカイヘイタをニンショウしました」「ラの音がする女の子に、出会った」
そしてタイトルが出ます。「Q10」。印象的な出会いです。

こんなシーンも。
Q10はロボットなのでリセットボタンがあります。左の奥歯です。
平太は心臓が良くありません。体操の時間は見学です。Q10 は平太の口に指を入れ、「リセットします」といいます。リセットすれば心臓が良くなると思っています。

「それは無理だよ」「人間にはリセットボタンはない ーないんだよ」
「ニンゲンはリセットしたいとき、どうするのですか?」とQ10は問いかけます。
人間はリセットできない。乗り越えて生きていくほかない。そんな人間の業のようなものを印象的なセリフで提起します。

こんな美しいシーンもあります。
鉄塔の下、平太が友だちと、子供の頃に埋めたガチャガチャのカプセルを掘り出します。水が入ってしまっていて、カプセルの中の紙は原型をとどめていません。でも、ぎりぎり『世界』と読めます。
平太の友達が「ほら、生まれたよ」とキュートに紙を渡します。
Q10は光にかざし「セカイ ー セカイがウマれました」とつぶやきます。
3人が「セカイ」を陽にかざし、夕方の空を見上げています

第一話のラストはこうです。
Q10 と仲良くなる平太の友だちに、平太は嫉妬します。
「オレは、それがばれないように、歯を食いしばって作り笑いをした。くいしばった時、奥の方でスイッチが入るのがわかった」
「そんなものがあるなんて、誰も教えてくれなかったスイッチが ー入った」
まさしく恋のスイッチです。

このように第一話では、Q10や平太の奥歯のスイッチが最初から最後まで、重要な意味を持ち、これからの展開に期待を抱かせるいいスタートとなっています。

ふたりのシナリオ作家

1988年からはじまった「やっぱり猫が好き」というコメディドラマがありました。
もたいまさこさん、室井滋さん、小林聡美さんの三姉妹のドタバタコメディで人気があり、わたしもよく観ていました。

この台本を、三谷幸喜さんも木皿泉さんも書いています。
もともとは同じ番組の台本を書き、そこからそれぞれの道を歩んできて、今や違った味わいをもつに至っている、人生の歩みのすごさや重さを感じます。

もし、おもしろそうだなと思ったら、木皿さんのドラマ、それに小説も出ていますので、楽しんでみてください。

以上、セリフは「Q10 シナリオBOOK」木皿泉著(双葉社)から、引用させていただきました。

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