れんさい

【連載SF小説】JOINT(ジョイント)(第3回)

1.はかなげな指揮官殿とアドレナリンな午前10時(続き)

俺たちの戦いと一瞬の隙

 スナイパー機が、一機ずつ確実に敵爆撃機をつぶしていく。おケイの『フラワー』もスナイパーだ。おケイは理づめで敵の動きを読み、一撃でしとめる。

 ― 敵12・3・2・4をたたけ。

 この、12・3・2・4……その意味は四次元空間の座標、時空間の位置をあらわす。12秒後、左右に3、前後に2、上下に4の位置が手薄になるから、攻撃をしかけろというミラの命令(コマンド)だ。

 重火器勢が、指示ポイントに急行している。

 同期のフロンテの『360』がまさに、重火器ドローンで、360度くまなく十連銃器が弾幕をはることができる。

 これまで前方五連銃器が限界だったが、フロンテの設計で全方位の十連銃器を装備できるようになった。銃撃したときの反動を、フロンテお手製の自動制動装置で絶妙に消しさる。

 おわかりのとおり、フロンテはメカの天才なんだ。

 フロンテは、俺たちに合図を送り、指示ポイントへ移動した。

 ― 重火器勢、弾幕を張れ!

 すかさずミラの指示がとぶ。
 はでな弾幕がはられ、指示ポイントあたりが昼間の明るさになる。

 ― ファイター勢、弾幕がとぎれるタイミングを逃すな!

 俺やラパンはファイターだから、弾幕から逃れた敵をまちぶせして一機ずつドッグファイトでたたいていく。

「さ、そろそろだぞ」

「いわれなくてもわかってるのし」そうラパンはいったが、やつの『うさ公』はのろのろとただようように移動していく。

 そして、やられちゃうぅ、って感じで敵の前に姿をさらし、相手が「いまだ!」と撃ちこむせつな、『うさ公』はふっ、と姿を消しさる。

 あれ? 敵がきょろきょろする一瞬のすきをついて、背後から敵の首をはねる。神出鬼没がラパンのとくいわざ。

 ボクシングでいうヒット・アンド・アウェイ。
 敵をほんろうする。蝶のように舞い、蜂のようにさす。まさにそれ。くやしいが、俺にはできない。

 俺はスピード・スター。人なみはずれたスピードで、上へ下へとめまぐるしく動きまわり、連打、連打で敵をたたく。このやり方が性に合っている。

「ほら、いっちょうあがりぃ!」すでに10機。ノルマは果たしたが、まだまだだ。

 ― アルト、ラパン、7・5・2・5、スナイパー周辺が手薄だ。支援にむかえ!

「お呼びだ! いくぞ『うさ公』」

「ごめぇん、いってきて。疲れちゃったのし……」

「鬼軍曹に、あとでどやされるぞ!」

「わかったのし、いけばいいんでしょ!」

 指示ポイントあたり、敵ファイターが終結しはじめており、長大な狙撃銃をかかえた、動きの遅いスナイパー機が狙われはじめていた。

とくにセルボ班長の6機のスナイパーが遅い。

「セルボさーん!」

「……」返事がない。

 敵ファイターが8機、あきらかにセルボ班長の機体を狙って攻撃をしかけようとしていた。スナイパーは接近戦ではファイターに勝ち目はない。

「『うさ公』援護をたのむ!」
「うん、わかりた」

 俺は側面から敵に攻撃をしかけた。フェイントをかけ、敵が銃をはなった瞬間、カウンターで連打を浴びせる。背後はラパンがなんとかしてくれている。

 一機、また一機。俺は敵を落としていった。

 ほんの一瞬、俺たちのすきをついて、敵の一機が、セルボ班長の機体の背後についた。

「あっ! まずい!」援護に向かう俺! 
 はたして、間に合うのか? 間に合ってくれ!

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