いまから24年前。長女が生まれる1年前のことです。
結婚直後の2年弱、アメリカに駐在していたこともあり、洋風建築での暮らしに憧れていました。
帰国して1年、鉄筋コンクリートづくりの、殺風景で、せまくて、湿気の多い社宅くらし。家が欲しいなあ、と、夫婦であちこち探してまわりました。
洋風の家は見つかったの?
うん、洋風の家。輸入住宅とか呼ばれているタイプ。一度、下見をさせてもらったら、たたみの部屋がひとつもなくて、そこも含めて、とても気に入りました。
念願の洋風建築なのですが
ふつうには買えませんでした。とても高かったのです。ふつうの建売の1.5倍くらいしました。
一度はあきらめました。うしろ髪引かれる思い……。
通るたびに、チラチラ見ていました。それから数か月たっても売れる様子がありません。
ある日、ふと、思いました。
当時、住宅金融公庫という国の金融機関があって、確かそこでローンを組めるのが、築後2年以内という条件があったのです。
ひょっとしたら、この家、もう2年たつかもしれない。そうなれば、ローンが組みづらくなって、価値がダダ下がりになるから、価格が下がるかも……。
冬でした。もうすぐ3月の決算期です。これも買う方に有利な条件でした。
だめもとで営業さんに聞いてみました
すると、思わくどおり、値下がりしていました!
背伸びすれば買えるところまできていました。
悩みました。
今日中に契約しなければならないという日になってもまだ悩んでいました。海辺で半日たたずみ、考えに考えました。
「こんな高額な買い物、35年ローンだぞ? わたしの人生をこの家にそそぎこむことになるけど、それでいいのか?」などと。
でも、最後、結局、何もわからなくなって、えいやーと契約することにしました。
契約から半年後、やっと引き渡し。それから半年後、長女が生まれました。さらに半年後、庭木を植えて、素敵なウッドデッキをこしらえました。
ウッドデッキで、わたしたちの父母が、うまれたばかりの孫の長女を抱いて、にっこりと写真に納まりました。
みんないい笑顔をしていました。
それから、はや24年がすぎました
長男も生まれ、子供たちはいまでは一人前です。
家の中は、物であふれ、整理がおいつきません。
木は伸び、伸びすぎていまでは手入れが大変です。
いっぽうで、わたしの母が亡くなり、カミさんの父親も亡くなりました。
家はあちこち痛み、わたしの身体もあちこち痛みます。
ウッドデッキもあちこち壊れ、手すりはぐらぐらして、布団を干すのがためらわれるくらいです。
わたしはこの冬、定年になり、退職金でローンの残金を払うことにしました。
住宅金融公庫はとうに破綻し、民間の銀行に借り換えています。
思い返すと、金利も買った当初はずいぶん高かった。
それも、この3月で完済になります。
ようやく、自分のものになります。
これからもこの家とつき合っていくことになります。自分たちの身体とおなじく、痛んだあちこちを修理しながら、暮らしていくことになります。
ちなみに、昨日ご報告した照明器具ですが、今日、つくようになりました。
かってに死んだことにするな、とでも言いたいのでしょうか?
でもごめん。やっぱり交換するね。
それじゃまた、チャオ!
- 追伸(2023/2/26)
- 照明は快調についていましたが、一週間前ほど前に再び、つかなくなりました。