3.セカンド・ハンターたちのつどいとマニアックな夜10時
どうしても気になった。
食堂から出ていくセルボ班長の姿が、あまりにも気落ちしているように見えた。
僕はフロンテ。重火器(Heavy Machine Gun)機担当。
さっき、同期のおケイにいわれて、セルボ班長の動きがとまったころの映像を、脳内で再生したんだけど、赤いドローンを狙撃したあと、動きがとまったように見えたと、僕はいった。だけど、それだけじゃなかった。
もうひとつ、記憶を再生していて気づいたんだ。セルボさんのドローンのうちの一機の、狙撃銃の照準がくるっているように見えた。
ほんの少し。
その修理をしながら、気になるところをきいてみようとおもう。僕は趣味で、仲間の機体の修理を毎日のようにやっている。修理班よりもうまく修理できているはずで、それがひそかな自信になっていた。
「まったか? フロンテ」
セルボ班長がお願いした機体をもって、修理ラボに姿をあらわした。
「いいえ……、あ、確かにそれです……。機体番号SSP001315」僕は機体をうけとり、修理ベンチのホルダーに固定した。
「こいつ、……二か月前、銃器の砲身を3センチ伸ばしたときに……、補強材を張りましたが、それがずれて固定ボルトと干渉してます……。だから……、コンマ数ミリ、照準がずれてます」
「狙撃銃の照準のずれは、数ミリでも命とりだからな、標的のところではズレが何センチにもなる」
「ええ……、班長は狙撃時に補正しているので当たりますが……、とっさだと、狙いに時間をくうことになります」
「最近、こいつ、くせがつよくなったな、と思っていたんだ。たすかるよ」
「いえ……、夜遅く……、呼びだしてすみません。どうしても気になってしまって……。ちょっと調整しますね」
僕は砲身の補強材をはり直し、固定ボルトにあたらないように調整する作業をすすめた。
「ほんとうにフロンテは器用だな」
「家にある機械はほとんどばらしました……」
「みんな戻せたのか?」
「……半々って、ところですね……、へへ」
「親に感謝しろよ」
「ほんとですね……」
「こまかいところまで気を使って機体を整備したら、きっとエースになれるぞ」
「いいえ……、僕は撃墜した数を競うようなのは性にあわなくて……。べつにトップじゃなくていい性格なんです……。むしろ……二番手くらいが気楽でいいです」
「へえ、フロンテもか。僕も二番手主義さ。一番人気のコミックより、二番目の地味な作品が好みだったりな」
「えっと……セルボさんと似ているところがあってうれしいです」
「セカンド・ハンターどうしか」
「はあ……、あ、そうだ。落下したセルボさんの機体……、回収できたんですか?」
「え? 機体? 俺の?」
「はい……」
「い、いや、陸地だったのに見つからなかったってさ。回収班から報告がきたよ」
「……めずらしいですね、……見つからないなんて」
「ああ、そうだな」
もし機体が敵の手に渡れば、そこから機体性能が特定されたり、航路記録から基地の所在地がばれたりする。落下機体を回収するのは、そんな理由のためだ。
だから、落下機体の回収はけっこう重要なんだ。見つからないのは結構めずらしい。