4.二段ベッドの上段にひそむ泣き虫と子守り歌の深夜11時
「もう、いつまで泣いてるの、ラパン! いいかげんに寝かせて!」
わらしはラパン。二段ベッドの上に生息している。いま下の住人、おケイにしかられて、もっと悲しくなったところ。
「おケイ、ごめんね。でもさびしくてさびしくて」
「その、うさぎのぬいじゃ、なぐさめにならないわけ?」わらしはおうちから、うさちゃんのぬいぐるみを持ちこんでいるのだけど、がっちり抱きしめても、さびしくてしかたない。
「うん、だめなのし。おともだち、呼んでもいい?」
「え? ま、まって、まって、それだけはやめて、おねがい!」
「だわよね~。おケイ、おともだち苦手なのし。でも、じゃあ、どしたらいい? わらし、どしてもさびしくて」
最初のころ、なんどかおともだちを呼んだことがある。
だけど、同期のだれもなじんでくれなかった。おともだちに。
それ以来、ここには、呼ばないことにした。
家にいるころは、わらしがおともだちを家に招いても、パパもママも、怒らなかった。最初はいろいろ、とまどったみたい。だけど、そのうちなにもいわなくなった。わらしが一日中、おともだちと遊んでいても、なにもいわなくなった。
わらしには兄弟もいないし、パパもママもパン屋の仕事で朝早くから夜遅くまで忙しいし、ひとりぼっちはさびしすぎる。なので、しょっちゅうおともだちを呼んで、遊んでた。
迎撃隊にはいってからは、おケイやアルトやフロンテの同期もいるし、ほかにもいろいろ仲間がいるので、ふだんは寂しくないのだけど、ときどき、淋しい夜もある。今日のように……。
「ねえ、おケイ、お話をしてくれる?」
「いや、もうねむい」
「じゃあ、おうたをうたって」
「ゆるして~。もうねむいの」
「じゃあ、呼んじゃう。おともだち」
「それだけはやめてぇ……」
「だったら、おねがいのし」
「もう、しょうがないなあ」
そういって、おケイは自作のゆったりした歌を歌ってくれた。即興で歌をつくれるのがすごい。そしてお歌もとっても上手なのだ。
♪街の真ん中 どまんなか
道をすすむはへび、けむし
長いものにはまかれちゃえ
みじかいわたしは空をとぶ
♪空を飛んだら 霧が出て
霧の中から湧くは、こうもり
ひらりひらりと身をかわし
細いうなじにかぶりつく
「おケイ、ありが、とう……」
ようやくそれだけいうと、わらしは目をとじた。
今日は、おケイに、あたまをなでなでされなくても、ねむれそう、なのだ……。