れんさい

【連載SF小説】JOINT(ジョイント)(第10回)

4.二段ベッドの上段にひそむ泣き虫と子守り歌の深夜11時

「もう、いつまで泣いてるの、ラパン! いいかげんに寝かせて!」

 わらしはラパン。二段ベッドの上に生息している。いま下の住人、おケイにしかられて、もっと悲しくなったところ。

「おケイ、ごめんね。でもさびしくてさびしくて」

「その、うさぎのぬいじゃ、なぐさめにならないわけ?」わらしはおうちから、うさちゃんのぬいぐるみを持ちこんでいるのだけど、がっちり抱きしめても、さびしくてしかたない。

「うん、だめなのし。おともだち(・・・・・)、呼んでもいい?」

「え? ま、まって、まって、それだけはやめて、おねがい!」

「だわよね~。おケイ、おともだち苦手なのし。でも、じゃあ、どしたらいい? わらし、どしてもさびしくて」

 最初のころ、なんどかおともだちを呼んだことがある。

 だけど、同期のだれもなじんでくれなかった。おともだちに。

 それ以来、ここには、呼ばないことにした。

 家にいるころは、わらしがおともだちを家に招いても、パパもママも、怒らなかった。最初はいろいろ、とまどったみたい。だけど、そのうちなにもいわなくなった。わらしが一日中、おともだちと遊んでいても、なにもいわなくなった。

 わらしには兄弟もいないし、パパもママもパン屋の仕事で朝早くから夜遅くまで忙しいし、ひとりぼっちはさびしすぎる。なので、しょっちゅうおともだちを呼んで、遊んでた。

 迎撃隊にはいってからは、おケイやアルトやフロンテの同期もいるし、ほかにもいろいろ仲間がいるので、ふだんは寂しくないのだけど、ときどき、淋しい夜もある。今日のように……。

「ねえ、おケイ、お話をしてくれる?」

「いや、もうねむい」

「じゃあ、おうたをうたって」

「ゆるして~。もうねむいの」

「じゃあ、呼んじゃう。おともだち」

「それだけはやめてぇ……」

「だったら、おねがいのし」

「もう、しょうがないなあ」

 そういって、おケイは自作のゆったりした歌を歌ってくれた。即興で歌をつくれるのがすごい。そしてお歌もとっても上手なのだ。

 ♪街の真ん中 どまんなか

  道をすすむはへび、けむし

  長いものにはまかれちゃえ

  みじかいわたしは空をとぶ

 ♪空を飛んだら 霧が出て

  霧の中から湧くは、こうもり

  ひらりひらりと身をかわし

  細いうなじにかぶりつく

「おケイ、ありが、とう……」

ようやくそれだけいうと、わらしは目をとじた。

今日は、おケイに、あたまをなでなでされなくても、ねむれそう、なのだ……。

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