れんさい

【連載SF小説】JOINT(ジョイント)(第11回)

5.待ちに待った親子キャンプとお弁当の昼12時

 今日と明日、非番のD班は、3か月に一度のお楽しみ……。

 待ちに待った親子キャンプだ。

 俺、アルトもこの親子キャンプを楽しみにしてた。あたりまえだ。

 けどさ、外を見れない、せまいカプセルに押しこめられての移動って、ちょっとやりすぎじゃない? カプセルをオープンしたら、どこだかわからないキャンプ場。行きかえりも楽しみたいんだけどなあ、小学校の遠足みたいにさ。

 まあ、基地の場所は極秘だから、しかたないんだけど……。

 キャンプ場はいつも同じ。

 近くに川。

 少し遠くに山。

 紅葉のきれいな森を切り開いて、学校のような白い宿泊施設がある。ベッドとテーブルに椅子だけの部屋に一家族づつ割り当てられて、一晩すごす。

 このところ、俺らは正直、疲れ気味だった。

出撃の頻度が増えていた。

これは、精神的にも肉体的にもきつかった。

ラパンは毎晩のようにホームシックで泣き、フロンテは毎晩、趣味のドローン修理に逃避し、おケイは怒りっぽくなり、俺としょっちゅう衝突していた。つまり俺も疲れて短気になっていたってこと。

 ふと思う。

俺らは4日に一度の当番だけど、指揮官ミラにとっては毎日だ。非番はない。

 ものすごく、ストレスのたまる毎日なのにちがいない。だけど、俺なんかじゃ、なぐさめようがない。くやしい。

きっと鬼軍曹に、いろいろ理由をつけて、しかられているはずだ。なんとか力になりたい。ほんとうにそう思う。

 そうそう、撃墜されたセルボ機、あれは結局見つからなかった。

墜落場所ふきんの住民に、ひろったのなら提出することをお願いしたが、出てこなかった。墜落をみかけたのなら通報するようにも呼びかけたが、一件も通報はなかった。

 どこにいったのだろう?

 なぞだ。

セルボ班長は鬼軍曹に何度か責められていた。

墜落はセルボさんの責任だとしても、墜落機体がみつからないのは、セルボさんのせいではない。怒ってもしょうがないのに。

 と・に・か・く、そんな、ストレスでパンパンの俺らは、このキャンプの日になれば、すべてのストレスが発散される、そんな思いで、この日がくるのを待ちこがれていた。

 そして、ついにその日がやってきた。

そしてそして、俺らはいま、キャンプ場にいる!

 キャンプを指揮する少尉から型どおりの指示があった。

「部屋番号は、伝えたとおりだ。ご両親、ご家族がその部屋で待っている。急がずに各自、部屋にむかうこと。あわててころんでケガしたりすることのないように。去年、じっさいにケガした奴もいたんだからな。くれぐれも走るな。わかったな。それではD班、一時、解散!」

 俺らは少尉の目のとどく範囲では、競歩のように急ぎ足で。

そして宿泊施設にはいったとたん、先を争って、自分の部屋に急いだ。

 俺は312号室。三階だ。

3段ぬかしで階段をあがり、部屋まで一直線に走った。

 あった。

312号室とかかれたドア。俺はノックした。返事がない。

 もういちどノックした。

 はい、と小さくママの声が聞こえ、ドアが静かにひらいた。

 そこに立っていたのはパパとママだ。

三か月ぶりのパパとママだ。俺はふたりの胸に飛び込んだ。

「パパ! ママ! 会いたかった!」

「アルト! 元気か!」

「アルト! ちゃんと食べてた?」

 しばらくの間、家族でだきあい、涙を流した。

 ドローンでのリモートでの戦闘は、直接命を失うことはない。

 撃ち墜とされても無人の機体なのだから。

だけど、軍事基地にいるということは、敵の攻撃の的になりかねない。そういう意味では、危険な役目にはちがいない。そのことを親・子ともにわかっていた。

 

< 第10回へ | 第12回へ >

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA