れんさい

【連載SF小説】JOINT(ジョイント)(第12回)

5.待ちに待った親子キャンプとお弁当の昼12時(つづき)

 だからこそ、三か月ぶりにふたたび会えた、そのうれしさがあふれ、涙になった。

 ママが作ってくれた、ビーフシチューやホットサンド。

 俺の好きなものばかりのお弁当を食べた。

パパもママもにこにこ笑いながら食べた。たがいに「おいしい」「おいしい」といいあいながら食べた。

 俺は基地の食堂のごはんも嫌いじゃない。

 だけど、ママの料理は別格だった。

「外に行こう!」お昼ごはんを食べ終わり、俺は両親を外へさそった。

 宿舎の玄関から外に出ると、濃い緑がまぶしいくらい。

秋晴れだ。

 俺は両親といっしょに川に向かった。

芝生を走り、ふと、ミラのことを思った。

ミラはここにくることはできない。ミラに非番の時はないからだ。

ミラは戦闘のときはもちろん、それ以外の時間もふくめると、一日の半分以上、戦術AI『インドラ』に接合(ジョイント)されているのではないだろうか。

 ミラはなんて大変な毎日をおくっているんだ! 俺たちとあまり違わない年なのに。

 そう思ったら、何かおみやげでも、持って帰ってあげたいと思った。

 俺は、フロンテやおケイと一緒に川で水遊びをした。

ラパンは家族と部屋にこもっている。やつらしい。

 青空に向かって、バシャバシャと水がはね上がって、キラキラひかっている。

秋だから、水はとても冷たくて、ふつうなら水をかけあったりしない。でも、そんなこと関係なかった。ひゃあひゃあいいながら、俺たちは水しぶきをあげて遊んだ。そのようすを、俺の両親、おケイやフロンテの両親がやさしく見つめている。

 そして、そして、夜は、超絶お楽しみの、キャンプファイアーとバーベキュー。

 それまでの空き時間、俺は乾いた服に着替えて、夕陽をみながらパパ、ママと散歩した。

「アルトたちのおかげで、敵国の侵略は水際でふせげているけど、戦況はどうだ? 大丈夫なのか?」パパがきいた。     

「うん、だんだん、攻撃の頻度が増えている感じはしているけど、指揮官のおかげで、楽勝で勝ててるから、大丈夫さ」

「優秀な指揮官なんだな」

「すごいよ、俺たちの班は11人26機あるんだけど、戦闘中、入り乱れたって、全部、どこにいて、どんな状況かわかっている。つまり数百の敵の位置もわかっているわけ。そんなの全部わかったうえで、アルト、どこそこに向かって戦え、とか一人ずつに細かく指示を出す。つぎつぎにすごく早く。すごい人だよ、指揮官は! 俺、尊敬している! すっごく尊敬している」興奮ぎみに俺はまくしたてた。

「いいわね、尊敬できる人がいて」

「うん、それにさ、そんなすごいひとなのに、俺とあまり変わらない年なんだよ、たぶん、だけど」

「まあ」ママは口をあんぐりとあけ、

「それはすごいな」パパも驚いた表情をみせた。

「だから心配でさ」

「心配?」とママ。

「だって、俺たちとあまり違わない子供なのに、非番もなく毎日待機して、いざ侵略があれば、集中して戦う、そんな毎日なんだ。俺だったら、とっくにまいっちゃうよ」

「へえ、アルトも他の人の苦しみとかわかって、なんとかしてあげたい、なんて思うようになったんだな」とパパが関心したように、うなずきながらいった。

「そりゃ、俺だって、みんながどれだけ苦しいかとか、わかるよ」

「アルトは自分のことしか眼中になかったのにねぇ」とママもコクコクとうなずく。

「そんな子供っぽいか? 俺って」

 そういうと、パパとママは顔を見合わせてわらった。

「アルトはそういう子だったのよ、三か月前までは。でもいまは成長したわ」

「戦争は嫌だが、アルトが成長するのを見るのはうれしいな」とパパが俺の頭をなぜた。俺は、子供あつかいされて、すこし不満だったけど、成長したとほめられて、すこしうれしかった。

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